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770年続く一ノ井の誇り
奈良に春を呼ぶ東大寺の「お水取り」。巨大な松明が二月堂の舞台を駆け抜ける幻想的な光景は全国的に有名ですが、実はそのクライマックスで使われる特別な松明が、名張市赤目町一ノ井で作られていることをご存知でしょうか。
毎年2月から3月にかけて行われる、東大寺への松明奉納行事
毎年2月から3月にかけて行われる、東大寺への松明奉納行事です。
赤目町一ノ井にある「極楽寺」を中心とした地域住民(松明講)の方々が、770年以上もの間、一度も欠かすことなく奈良へ松明を届け続けています。
• 2月11日(祝):松明切り出し・製作
朝早くから山に入り、樹齢30年ほどのヒノキを切り出します。これを手作業で加工し、独特の形の松明に仕上げます。
• 3月12日:東大寺への道中(調進)
仕上がった松明を、かつては徒歩で、現在は一部車両や電車も使いながら奈良へと運びます。
なぜ、名張の松明が奈良で使われるのか。そこには「道観長者」という人物の伝説が残っています。
今から約800年前、一ノ井を治めていた豪農・道観長者が、自身の私田を東大寺に寄進しました。その際、「この田から取れる収益で、永久に二月堂へ松明を献上せよ」と遺言を残したのが始まりとされています。
この時に届けられる松明は、お水取りの最終盤に行われる「韃陀(だったん)」という最も激しい行法で使われる特別なもの。まさに、名張の火が奈良の春を告げる「最後の灯火」となるのです。
今年(2026年)届けられる松明は、実は東大寺で1年間乾燥させ、来年(2027年)の行事で実際に使われます。1年後の春のために、今、名張の人が汗を流す。この時間軸の長さも、伝統の重みですね。
3月12日の出発の日、赤目口駅のホームには、大きな松明を抱えた講の方々が並びます。現代の駅の風景に、鎌倉時代から続く伝統が入り混じる瞬間は、まさに「INニュース」で捉えたい街の歴史が動く瞬間です。
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